場面緘黙おとな女子のブログ

場面緘黙の経験者が当時、現在を語ります。

物語が始まるまえ

物語が始まる前、夏がはじまるような季節に


誰もいない一人のアパートの西側に、


小粋な喫茶店があって、


髭をはやした足の悪いおじさんが


一人で営んでて、和風喫茶店で


雑誌や新聞が置いてあって


そこに気を休めにコーヒーを飲みに行くのが


たまのリラックスと贅沢だった。


しーんと鎮まった空気を感じては


しんみりとしていた。


私一人の町、


近くにはうなぎ仕出し屋があったり


民家が多くて、賑やかでも静かな町だった。


梅の木林もあった


のんびり時間が止まったまま


一人の時間は過ぎてゆく


なんにもしなきゃなんにも始まらない


物語が始まる前だった。


世の中の仕組みが全くわからなくて


他人のことも全くわからなくて


こわい以外の何者でもなく


孤独になれつつ暮らした


なにかを始める


一歩の町だったんだ


ずっと同じ風景、同じ町にすんでいたら


未来はなにが見えたんだろう。